大事にしまっていた衣装にそでを通す。
真っ白の生地には、見事な龍が描かれている。
暴走族の総長を望んだわけじゃない。
私はただ、好きな人の側にいたかっただけ。
「凛。」
部屋をノックする音。
「どうぞ。」
誰かはわかっている。
「用意できてるみてぇだな?」
「はい、『瑞希』さん。」
総長モードで答えれば、彼が目だけで笑うと私に手を伸ばす。
ウルフカットの頭をなでて、口元のシルキロールに触れながら言った。
「ポリ公につかまるようなヘマはするなよ、凛道総長?」
「押忍。」
そう答えれば、優しい表情で襟を直してくれた。
それを身につける時、僕は強い男でいなければいけない。
凛道蓮になる。
そう、俺は龍星軍4代目総長の凛道蓮。
今宵は新たな仲間をくわえて、龍星軍を率いて出撃する。
一階へと降りれば、白の戦闘服を着た仲間達が待っていた。
「凛!」
「凛さん!」
「リンリン~!」
「凛道!遅いぞ!」
「我が君♪」
「凛君。」
「やっとお出ましか、凛道。」
「うはははは!」
「みんなそろってますか?」
「お前が最後だよ、凛。」
そう言ったのは紅一点のカンナさん。
ロングの特攻服の下には、さらしを巻いていた。
肌の露出にドキッとしたけど、日焼け止めはちゃんとぬってるのか気になった。
いつもと違うのは、服装だけではなかった。
「カンナさん、髪・・・」
「おう!やっと、結べるぐらいになったからよ!」
短い髪を1つに結んでいたこと。
「今夜は、あたしが守ってやるから安心しろ。」
彼女の動きに合わせて、結んだ髪がゆれる。
その耳には、私がプレゼントした赤のピアスが光っていた。
それが嬉しくてうなずく。
「ありがとうございます、カンナさん。」
「ケッ!立場が逆じゃねぇーの?」
私達のやり取りに、カンナさんの隣にいた男子がぼやく。
ショートの特攻服を着た悠斗君だった。
ブーツを履いているせいか、いつもより視線が高い気がした。
悠斗君の発言にカンナさんがめんどくさそうに答える。