瑞希お兄ちゃんと入ったホテルは、私の人生の中で、初めて見るホテルだった。
「すごーい!カラオケがありますよ!?」
「・・・そうね・・・」
思わぬ設備にテンションが上がる。
そんな私と対照的に、瑞希お兄ちゃんはぶっきらぼうにしゃべる。
「ねぇ、先にシャワー浴びなさい。風邪ひくわよ。」
「え!?シャワー!?」
その一言で、私の浮かれていた気分が鎮まる。
マズい!
シャワーを浴びるってことは、お風呂に入るってことよね!?
(それって、男装を解除しなきゃダメだし、着替えるのに時間がかかるから先に浴びるのは・・・困る。)
「ぼ、僕はいいです!レディーファーストで、お先にどうぞ!」
「わ、私はいいわよ!男女平等だもの!」
「いいえ、お姉さんがどうぞ!」
「蓮君がどうぞ!」
「お姉さんがお先に!」
「蓮君がお先に!」
〔★譲り合いが始まった★〕
先に入りたくないから必死で抵抗する。
「僕、時間がかかりますから!」
「なに言ってるの!じょ、女性の私の方が時間がかかるから~先に入って!!その後は早く寝なさい!」
その言葉で気づく。
もしかして・・・
(女装も時間がかかるのかな・・・?)
女の子は、お化粧とかしなきゃダメだし・・・
瑞希お兄ちゃんはウィッグまでつけてるもんな。
「・・・・僕、本当に時間がかかりますよ・・・?」
「大丈夫だから!」
念を押すように聞けば、構わないという返事が返ってくる。
「・・・じゃあ、お先に入りますね・・・?」
「そうしなさい!」
私の言葉にホッとする女装のお兄さん。
それでこちらも安心したのだが・・・
「あ!?」
バスルームに向かいかけて気づく。
「着替えは!?」
「え?」
雨でぬれた=着がえ=着がえがない。
その方程式が頭に浮かぶ。
そんな私に瑞希お兄ちゃんは言った。
「バスローブがあるじゃない?」
「え!?でも・・・」
「あ!」
お兄ちゃんの表情も変わる。
彼も気づいたのかもしれない。
そうだよね・・・バスローブで女装するって、結構大変だと思う。
(てか、私の方がどうしよう・・・)
股間はギリギリセーフだけど・・・・
サラシ、おっぱいが・・・・
「「・・・。」」
((バスローブで、男装(女装)を隠せるのか・・・!?))
〔★2人は同じ問題に直面した★〕