逃げるように入り込んだホテルのロビーは、とても変わっていた。



「イラッシャイマセ。」



誰も人がおらず、音声ガイダンスがお出迎えしてくれた。



「人がいないですね?」

「そ、そういうものらしいわ。」



気まずそうにしている瑞希お兄ちゃんが新鮮に見える。

どうしてそんな態度を取られるかわからないけど、私はちょっと浮かれていた。



(瑞希お兄ちゃんと朝まで二人っきり!)



2人だけでどこかに行って泊まるというのは初体験!

なによりも、初めて見る設備にワクワクしていた。



「こんなホテルがあるんですね?でも、どうやって入るんですか?」

「そ、それは・・・そこにあるパネルで選ぶのよ!」



言われて壁を見れば、いろんな部屋が表示されていた。



「すごい!タッチパネルで選ぶんですか!?」

「そ、そうよ!」

「あれ?でも、変な表示の仕方ですね・・・なんで、真っ黒な部分があるんですね。」

「そ、それは使用中の部屋よ!」

「じゃあ、この休憩と宿泊ってどういうことですか?ホテルって、泊まる場所ですよね?休憩??」

「だあああ!それもわからないの!?」

「え?おに・・・お姉さんは、わかるんですか?」

「いや、その!とりあえず、宿泊にしとくからね!部屋は、えーと!」

「すごい!全部違う内装ですね!屋形船とか、パルテノン的なものとか・・・これ、海の中みたいですよ!この部屋は、テレビがすごく大きい!」

「ちょ、静かにしなさい!はしゃぐなっ!」

「あ、すみません。はじめてなもので・・・」

「くっ!見ればわかるわッ!ここでいいな!?」

「はい!」



(お兄ちゃんが選ぶなら何でもいいです♪)



そんな思いでうなずけば、彼は部屋を選んでくれた。



「い、行きましょう!」

「うん!」



エレベーターが開き、降りてきたカップルとすれ違う。

すごく仲が良さそうで・・・羨ましかった。



(私もいつか、瑞希お兄ちゃんと・・・)



「蓮君、早く乗りなさい。」

「はーい!」



好きな人に引っ張られ、狭いエレバーターに乗り込んだ。