「じゃあ、『切ったつもりで切った』らどうかな?」

「え?」

「手首、出して。」



相手の手を取りながら、近くに転がってるペンを手に取る。

そして、比較的、傷がない部分に横線を引いた。



「はい、今日の分のリスカだよ。」

「え!?」

「いつも通り、痛くなかったでしょう?今度から、このリスカをすればいいよ。」



ペンで作った傷をなぞりながら伝える。

それに相手は目を見開くが・・・



「――――――――うわーん!!」

「わっ!?」



私に抱き付いて泣き出した。



「うえええ!うえぇえーん!」

「ど、どうしたの!?大丈夫!?」

「大丈夫だよ、蓮君。」



言ったのはなずなちゃん。



「ちさちゃん、嬉しかったんだよ。」

「え?」

「私も、そういうやり方があるなんて思いつかなかった・・・初めて知ったよ?」

「ホント、すごいね蓮君。」

「ちさの辛みをそんな風にかわすなんて、すごいよ。」



気づけば、他の子達も悔い口に言っていた。



(褒められてるの、私?)



〔★称賛の嵐だ★〕



「けっ!バカじゃねぇの!メンヘラ女をたらしこむと、後が面倒なのに!」



そんな中、1人だけ不満そうなのが監視役の子。



「お前みたいなのが、相談女に引っかかって本命と破局するタイプなんだよ、蓮。」

「ちあきちゃん・・・」

「いつまでも、蓮にベタベタするなよ!」



そう言って、リスカの子を私から引き離そうとするちあき。



「いや!いやいや!」

「いたたた!ちょっ!?髪をつかまないでください!」

「離れろよ!」

「やめてやれよ、ちあき!」

「うるさい、馬鹿男子!蓮から離れろ!」

「いや!いや!いーやー!」

「テメー迷惑なんだぞ!」

「僕は気にしませんよ、ちあきちゃん!大丈夫だから、彼女が落ち着くまで、待って下さい。」



しがみ付いてくる相手の背をなでれば、抱き付かれる力が強くなる。

それでちあきも、手を離したのだが・・・・



「このバカ!二度と親切にしねぇーからな!」

「いた!?」



怒鳴りながら立ち上がると、私の背中に蹴りを入れる。

そして、トランプゲームの輪から離れてしまった。