「君は・・・変な薬を飲まされたりしてない?」
それで相手の表情が強張る。
飲み食いをやめてしまう。
「飲んだの?」
口を閉じて答えないなずなちゃん。
だから質問を変えた。
「逃げないように、無理やり飲まされたんだね。」
「・・・うん・・・」
聞えるか聞こえないかの声で、うつむきながらなずなちゃんは答える。
(遅かったか・・・!)
マスクの下で口元をゆがめる。
(2週間という時間を考えれば、飲まされていても・・・)
「どんな薬かわかる?」
その問いに、彼女はぼそぼそと答える。
「私は・・・脱法ハーブだと思う・・・」
「『私は』・・・?」
「・・・みんな・・・違う薬を飲まされるの。さっき、蓮君が気絶させた子がサプリ系のドラック・・・。」
「そうですか・・・。なずなちゃんが、最初に飲まされたのは、いつ?今も続けて飲んでるの?」
「私は10日ぐらい前からずっと・・・。長い子だと、8カ月ぐらい。」
「そんなに?」
「うっ・・・もうやだ・・・家に帰りたい・・・」
涙ぐみ、その場に座り込む少女の肩を優しく抱く。
「泣かないで・・・大丈夫だから。」
「うっ、うっ・・・!」
ふと視線を感じる。
「・・・・?」
顔を上げれば、全員が私を見ていた。
「!?」
(え?なにこの状況??)
幼子のようなしぐさで、瞬き一つしない。
若干怖いと思っていたら、体に何かが手に当たる。
「トランプ・・・」
床に無造作に置かれたおもちゃ。
みんなで遊べるおもちゃ。
(とりあえず・・・)
「みんなで遊びませんか?」
ガン見している少年少女達にトランプを見せて、手招きしてみる。
それで、全員が私の方へ寄ってきた。
「うわ!マジで!?リアルハーレムじゃんかー?レベルは低いけどさぁ~!」
少し離れた場所から、小馬鹿にする声が聞こえたかも知れない。
スルーしてもよかったけど、これ以上引っかきまわされるのはごめんよ。
だから、怒りを鎮めて言った。
「・・・ちあきちゃんもおいでよ。一緒に遊ぼう。」
笑顔で誘えば、ムスッとした顔をする。
そして、聞こえない声で何か言ったが、彼女もやってきた。
(・・・盛り上がるかな、トランプ?)
人生で一番気まずいトランプが、今始まった。
〔★カードゲームがスタートした★〕
~半グレ狩りに内緒で出動!?家出っ子達を救出せよ!!~完~