週に1回の夜店は、今夜もにぎわっていた。

今年は、毎週みんな参加できるということで、途中から3人体制だったのを4人体制にした。
同時に、サービスプランを増やした。



「カフェオレ、お届けに参りました。」

「お疲れさん、チョコちゃん!」



それがコーヒーの配達。

といっても、対象は夜店に出店してる人やお祭りの執行委員の人達が集まる休憩所限定。

ピザの宅配じゃないけど、みんなの推薦を頂いて、私がコーヒーの配達の担当となっていた。

私の訪問に、アイスコーヒーを頼んだ大原会長が温かく迎えてくれた。



「今夜も頑張ってるなー!?」

「ありがとうございます。」



執行委員のテントでくつろぐ会長さんにドリンクを2つ渡す。

それを受け取った会長さんが、その1つを自分の隣にいた人に渡しながら言った。



「みさきちゃん!この子だよ、うちの夜回り王子は!」



会長がドリンクを渡したのは、大学生ぐらいのお姉さんだった。



「この子ですか・・・?大原のおじいさん?」



キレイな人だったけど、疲れ切った表情をしていた。

なにかあったのかな?



「わはははは!可愛いだろう!?わしの孫だ!!」

「え!?お孫さんなんですか?」

「僕もそうだったら、よかったんですけどね・・・」



お世辞にお世辞で返す。

お姉さんも意味がわかったのか笑顔になる。



「それは残念ね。はじめまして、春野みさきです。」

「あ、こちらこそ。僕はー」

「チョコちゃんって呼んでやってくれ!わはははは!」

「それあだ名ですよね!?」

「チョコちゃん、この人は、わしの知り合いのお孫さんなんだ!」

「僕の話、聞いてますか!?」

「大原のおじいさん、からかっちゃかわいそうよ。」



見かねたお姉さんが、苦笑いしながら言ってくれた。



「本当はこの子、どこの子ですか?」

「わははは!聞いて驚くなよ~あのサナちゃんの弟だ!」

「え!?真田くんの?」

「え!?お兄ちゃんをご存じですか?」

「うん。お店に、コーヒーを飲みに行ったことあるの。こんな可愛い子がいたんだ~」

「あ、ありがとうございます。」

「なんで、チョコって呼ばれてるの?」

「ちょこちょこ動くからな!がはははは!」

「そうなの~?可愛いわぁ~!」



そう言って、私を抱きしめるお姉さん。

どうしていいのかわからず、されるがままになる。

そんな私達を見て、少し声を潜めながら会長さんが言った。