「獅子島さーん、どうぞ。」
「フン。」
冷たい目で受け取ると、画面を何度かタッチして耳にあてる獅子島さん。
(電話をかけてる??)
誰かわからなかったけど、穏やかな声で彼はしゃべりる。
「もしもし、私です。はい、そうです。お願いします。」
そう言って電話を切る獅子島さん。
わずか20秒ほどの会話。
切ったと同時に、携帯の画面を数回触ってから私へと返却してきた。
「ほら、返してこい。」
「なにをしたんですか?」
「懇意にしている司法書士に電話し、その番号を登録した。そこで相談にのってくれるように話はつけた。闇金には、司法書士の名刺を渡してこちらで処理させると伝えろ。金融会社の業務を調べてくれて仕事がしやすいと、言ってやるのも忘れるな。それで息子は解放されるはずだ。」
「え?もしかして、助けてくださって・・・」
「いいからさっさといけ。母親を連れて行って来い。」
「は、はい!すみません!」
すごまれたので、急いで逃げた。
「獅子島さん、ありがとうございます!行きましょう、川原さん!」
「はい!」
泣いている母親の手を取って外に出る。
「闇金さーん。」
外に出れば、車に乗っていたはずの人達が下りていた。
「たかし!」
「母ちゃん!」
怖い人達に、両脇を固められた息子さんもいた。
私を見て、携帯を渡してくれた怖い人が聞いてきた。
「もう携帯はいいのか?」
「はい。これ、息子さんに返しますね。」
「いや、こっちに返しな。」
「え?この携帯、息子さんのですよね?」
「金を返せない奴からはとりあげるってのが暗黙のルールなんだぜ、坊や?」
「では、その借金の件でご相談を。」
「子供に何ができる!?」
大声で怒鳴られて、母親と息子が小さく叫ぶ。
そんな大声出すことないのに・・・と思いながら冷静に対応した。
「できませんので、今後はこちらを通してください。」
そう告げて、名刺を差し出す。
意外にも受け取ってくれる闇金の人。