お姉さんが使う帰り道は街頭が少ない。
それに加え、いつもならついてるはずのマンション前の明かりが消えていた。
彼女は周囲を気にしながら、手に持っていた懐中電灯をつける。
段差のある足元に光を向けながら、一歩前に踏み出そうとする。
「はぁ~はぁ~はぁっ・・・!」
「きゃあ!?」
お姉さんの体が後ろに下がる。
下がるのではなく引きずられた。
「たす・・・!?」
そう言った声が途切れる。
知らない男が彼女を後ろから抱き込み、口を手でふさいでいた。
そのまま、マンションの前から離れるように引きずり出したのだが・・・。
パシャッ!
「うわ!?」
「そこまでです!!」
ヒュンヒュン、ドッドッ!!
「ぎゃっ!?」
「御用です。」
抱き付いてきた男のこめかみに叩きこまれた武器。
それで頭を抑え、男はその場に倒れ込んだ。
「お姉さん!」
「坊や!」
女性を抱きしめ、かばいながら距離を取る。
「この野郎!」
「うわぁあ!?」
地面で伸びている男を会長さんが抑え込み、縄でグルグルに縛って行く。
「ひっとらえたぜ!」
「もう大丈夫ですよ?」
「よかったっ・・・!」
そう告げれば、腕の中の大人はポロポロと泣きだした。
暗かったマンションの明かりがつく。
「作戦通りだな。」
そう言って近寄ってきた瑞希お兄ちゃんの手には携帯カメラ。
「瑞希お兄ちゃん、証拠写真はとれましたか?」
「バッチリだ。連射モードにしといたぜ?警察にも通報したから、もう心配ないぜ、愛子さん?」
「愛子お姉さん、怖い思いさせてすみませんでした。」
「いいえ。承知の上で、私もその計画乗りましたから。」
そう言って微笑むお姉さんの目元に、持っていたハンカチをそえる。
駅で瑞希お兄ちゃんが提案してきたのは、びっくりするような作戦だった。