「警察には、相談したっていう記録がされればいいの・・・記録さえ・・・」
「え?それって、意味あるんですか?」
「あるわ。犯人が捕まった時、いつから被害を受けていたかの証拠になるの。最悪の結末になった時は・・・警察が動いてくれなかった証拠にもなるからね・・・」
「最悪の結末って!?」
「そりゃあ、殺された時だろう。」
「瑞希お兄ちゃん!?」
通常状態に戻った瑞希お兄ちゃんが呆れ気味に言う。
「ストーカーの法律が出来たのも、被害者が殺されてるケースが増えたからだぞ?被害者が自己防衛してなかったって言われないためにも、警察が動かないとしても相談しに行って、相談記録を残しておくべきなんだ。」
「スポーツと違って、嫌な記録ですね・・・」
「ああ、増えても嬉しくねぇな。」
「・・・でも、相談はしておかなきゃ。警察で嫌な思いをしても・・・」
「嫌な思い?」
「あ、ごめんね。坊やに、チョコ君に愚痴ることじゃないのに。」
「いえ、僕でよければ聞きます。言うのも聞くのもタダですよ?」
「まぁ、ありがとう。」
つらそうなので提案すれば、私の頭をなでながら彼女は言った。
「警察に相談してもね・・・帰宅時間を変えたり、帰り道を変えたりできないかって言われたわ。恋人や家族に迎えに来てもらったり、同僚と帰ったりしたらって言われた。でも・・・・仕事の時間は会社が決めてるから変えられない。そうなると転職になるけど、学生の頃から希望していた職種で、やっとはいれたのに辞めるなんて・・・できない。帰り道も、他にルートがないから帰ってる。1人暮らしで両親は地元に住んでて、恋人もいない。こっち方面に住んでる同僚もいない。だから、出来るのは防犯ブザーを持つぐらいだけど・・・押せなかった。」
「押さなければいけない事態が起きたんですか?」
「昨日ね、襲われたの。」
「ええ!?」
予想してなかった返事に驚けば、気まずそうにお姉さんは語る。