「最後に確認しとくが・・・」
咳払いしながら瑞希お兄ちゃんが言った。
「今回は、俺がおとり役をする!俺が女装するのはかまわねぇが・・・」
一呼吸おいた後で彼は告げる。
「凛に俺が女装したこと言ったらぶっ殺す・・・・!!!」
静かにブチ切れる姿を見て思う。
(あ・・・これ、本気の顔だわ・・・)
〔★男の娘は本気だ★〕
美しくも、恐ろしいものを感じ、全身から生気が抜けていくのを感じる。
「ぜってぇー凛に言うなよ!?」
「言わない。」
「写真でも撮って、凛に見せたら許さねぇぞ!」
「撮ってない。」
「見てんじゃねぇーぞ!」
「見てないって。」
「わはははは!」
念押しする初代総長に、仲間達は雲散臭い笑顔で応じていた。
そして私は・・・・
(・・・・・・・見なかったことにしよう。)
全力で足とを消し、音が出ないような動作でゆっくりと裏口から這い出た。
(今夜、私が見聞きしたことは忘れよう・・・)
瑞希お兄ちゃんがお姉さんになったことは、忘れないけど。
足音を気にしながらお店から離れる。
ある程度離れたところで立ち止まる。
深呼吸をしながら考えた。
(どうしよう・・・)
瑞希お兄ちゃんに聞きたいことがあっただけど・・・
知らせたいことがあるのに、このタイミング訪問するのはダメな気がする。
今の瑞希お兄ちゃんに話しかけるのは無理よね・・・
(まいったな・・・サプリメントの件、出来れば早めに話したいのに。)
ちーちゃんの意見はちーちゃんの意見として参考にする。
でもやっぱり、瑞希お兄ちゃんの考えを聞いておきたい。
私に女装姿見られたくないって言ってたから、今夜会うのは無理よね・・・
(いや、待てよ・・・・)
そこで私はひらめいた。
顔を見るのがダメなら、見ないで話せばいいんじゃない?