「瑞希の決意はわかったが、万が一、凛道に遭遇しても良いように、しっかり役にはなりきれ。」

「伊織。」



(役って??)



「わかったな、『ミク』?」

「それ、俺のことか!?」



(瑞希お兄ちゃんのこと!?)



自分を指さす瑞希お兄ちゃんに、メガネを直しながら獅子島さんは言った。



「『俺』ではなく、『私』だぞ、『ミク』。お前は『鈴音ミク』だ。」

「どこのボーカロイドの名前だ!?」



(確かに似てる・・・獅子島さん、ボーカロイド好きなの・・・?)



「イオリン、何でその名前にしたの?」

「意味はない。チャラオの小僧が忘れて行ったゲームの名前を参考にしただけだ。5秒ほどで決めた。」

「適当だな、オイ!?」



(5秒の名前・・・)



〔★手間ヒマがかかってない★〕



「騒ぐな瑞希。鈴音ミクの職業は『女探偵』だ。」

「探偵!?」



(なんでその設定!?)



「家出した娘を探してくれという依頼を受け、探しに来たという設定だ。」

「それで探偵かよ!?」



(納得だわ・・・)



「さすがイオリン。それなら違和感ないわ~」



(うん、さすが東大生ね。)



「当然だ。あとは、タバコは吸わず、酒もたしなむ程度とすること。色仕掛けも忘れるな。」



(色仕掛け!?)



アダルトな表現に私はドキッとし、瑞希お兄ちゃんはムッとする。



「なんでだよ!?男の俺に、同性に媚びを売れって言うのかよ!?」



反発する瑞希お兄ちゃんに、獅子島さんは淡々と返す。



「女ならそれぐらいしろ。」

「俺は男だ!」

「今は鈴音ミクだ。出来ないのか?」

「できるか!」

「ならば、服装はミニスカート必須だな。」

「なんでだよ!?」

「そうすれば、意識しなくてもパンチラになるだろう?」

「股間見られたら、アウトじゃねぇか!?」

「見えそうで見えないようにするからいいだろう?最低でも、太ももをさらし続ければいい。」

「よくねぇーよ!」



(瑞希お兄ちゃんの太もも・・・見たい・・・!)



〔★凛の中で葛藤が起きている★〕