「ごちそうさまでしたっ。美味しかったー」
「ありがとうございます。お嬢さん、ほんとに美味しそうに食べてくれるからこちらとしてもとても嬉しいです」
「えへへ…」
照れる。
板前さんは嬉しそうに、またいらしてください、と私たちを見送ってくれた。
車の中で夏目さんが、
「亜子は笑顔がすごく可愛いよな」
と言ってきた。
「へっ?!な、なに言ってるんですか夏目さん」
急すぎてドキドキがまた戻ってきた。
夏目さんを見ると、私のことをじっと見ていた。
は、恥ずかしいんだけど…
「亜子」
「は、はいっ」
な、なに、この雰囲気?!
ど、どうしたらいいの。
恋愛小説だと、こういうとき…
えっと、えっと…っ。
いろいろと考えていると、私の顔の横に手を置いた夏目さんが、そのまま近づいてくる。
…え、うそ、ちょっと待ってこれってまさか…??
私は心臓がドキドキいうのが抑えられないくらいに頭が真っ白に。
「…キス、していい?」
ドッキン!と胸が高鳴った。
キス…
夏目さんを見て、私は、こくりと頷いた。
夏目さんなら、いい…。
すると、夏目さんの顔がもっと近くにきて、私は恥ずかしすぎて目をつぶった。
触れるだけの、やさしいキス。