と思ったが、しまった!
両手が塞がっていてドアが開けられない!

どうしよう、とあたふたしていると、麗奈がドアを開けてくれた。

「ごめんね亜子、気付けなくて」

いやいやジャストタイミングでしたよ。
小さいテーブルを出してその上にケーキとコーヒーを置いていく。

少しコーヒーを飲んで一息ついていると、麗奈がずいっと顔を近づけてきた。

「でっ?!」

…うん、やっぱそうなるのよね。

私はコーヒーのカップをソーサラーに載せる。
その時、見たのだろう。
私の右手薬指に付いた指輪を。

「ちょちょちょ、亜子?!これはなぁに?」

目をキラキラさせて私の右手を掴んだ。

「なぁに、って…な、夏目さんが買ってくれた指輪…」

私は麗奈を直接見ることが出来ず、俯いてちらちらと様子を伺うように麗奈を見て言った。