「囁かれたなんて!耳元で現状報告されただけよ!」

ぶはっ、と吹き出したのが聞こえた。

チラッとスーツの男の人を見ると、お腹を抑えて口元に手をやり、肩を震わせている。

「げ、現状報告って…!君、面白いな」

クスクス笑われて私は恥ずかしくなる。
なんで笑われなくちゃなんないのよ。
クレープ屋さんの前で!!

「麗奈、早くクレープ買って帰ろう。」

「えー。王子様と連絡先交換しなきゃだよ?亜子。これからめくるめくラブライフが始まるんだから!」

もう、どうにかしてくれこの子。
私にはどうすることもできん。
ため息がこぼれてしまう。
そんな中、笑いながらスーツ姿の男の人が言った。

「連絡先なんかいくらでも教えるよ、亜子ちゃん?」

名前…!
携帯を差し出してきた彼は、まだ笑っている。
しかも私を直視しないようにしてる…!!
ちょっと腹立つ。

結構です!と断ろうとした時、麗奈が私の制服のポケットから私の携帯を取り出し、勝手に連絡先を交換してしまった。

「ちょっ、何してんのよ麗奈!」

「いいじゃない。亜子、もう少し男の人に慣れて、恋愛しようよ!」

ねっ?と言うようにウインクをしてきた麗奈は様になっていたが、私は嬉しくなかった。

「なに、俺と恋愛でもする?」

にやにやしながら私に言ってきた。

「お断りよ!」

私はクレープも買わずにその場から逃げてしまった。