「あ、えーと、麗奈はいつも車で帰ってますよ」

「え?でも歩いてたよね?」

「みんなに今日の夏目さんみたいに注目されたくないみたいで少し離れたカフェで運転手さんを待ってるんです」

「運転手?」

苦笑いしながら夏目さんはハンドルをゆっくりと右にきった。
どこに行くんだろう、と思いながら私は答えた。

「麗奈、ああ見えて名家のお嬢様なんです」

「へぇ!すごい意外。」

や、やっぱり。
夏目さんは失言だと思ったのか、内緒な、とウインクをしながら言った。

な、なんだろう。
夏目さんがすっごくかっこよく見える。
スーツ姿で、高そうな車乗って、大人の余裕がすごいというか。

「近くにね、お気に入りのカフェがあるんだ。コーヒーとか飲める?」

「大丈夫です。ブラックは飲めないですけど…」

じゃあ大丈夫だね、とにこっと笑ってそのカフェまで車を走らせる夏目さん。