辞めてくれた麗奈に、私は教室に向かいながらさっきの話をした。
「…なにそれ。すっっっごいわくわくする!」
え。
なんでわくわく?
私の表情で考えてることがわかったのだろう。
「だって、その人きっと社会人でしょう?年上の男性ってことでしょう?しかもそんな、初対面の女子高生に耳元で囁くなんてっ…。何かあってもおかしくないね!」
ああ、そうだった。麗奈は恋愛小説や少女漫画が大好きだったんだっけね。
私も何冊か勧められて読んだけど、そんなにそんな恋愛に興味があったわけでもないため、特になにも感じなかった。
「何かあっても、て、例えば?」
「絶対また会うね!運命なのよもう!」
胸の前で手を合わせて目をキラキラさせている麗奈。
よくもまあそんな、何の根拠もなく運命だなんて…恥ずかしくないのかな。
「仮に、また会ったとしてもなにもないよ?」
冷めた私の態度が気に食わないのか、麗奈は私の顔の目の前に自分の顔を寄せてきた。
麗奈は美人なので、女の私でもドキドキする。
「なに言ってんのよ!何もないとかじゃない、何か起こさなきゃだめよ!」
いや、できればなにも起きて欲しくない…。
そんな話をしていたら入学式が始まる時間になった。