「すみません、お待たせしました」
パタパタと小走りで行く。
携帯を見ていた夏目さんが私に視線を移す。
じーっと私を見て、そして微笑んだ。
え、なに?
微笑まれる理由が分からなくて首をかしげると、頭をぽんぽん、とされた。
「ありがとね。よし、ランチ行こうか。何が好き?」
それだけしか言われなかった。
手を自然に繋がれて、そのままランチへ。
パスタが好きなので、私は和風パスタを。
夏目さんは、ハンバーグが好きらしく、それを頼んでいた。
なんか、可愛らしい…。や、まあハンバーグ好きってだけで可愛いとか言ったら失礼なのかもしれないけど、親近感は湧く。
頼んだものがくるまで、ドリンクを飲みながら水槽の中を泳いでいる魚を見る。
「うわぁ、群れてると鱗が光に反射してすごい綺麗。カーテンみたいですよね」
「表現がうまいね。でもちょっと生臭そうだよね」
「ひどいです!褒めて落とすなんて」
なんてたわいない話をしていたらメインが来たので食事タイム。
パスタをくるくるとフォークで巻きつけてる間、視線を感じた。
でも気にせずとりあえず一口。
「んっ、おいしぃ…」
自然と笑みがこぼれた。
そのとき、目が合った。
急に恥ずかしくなったため、視線を逸らして言った。
「な、み、見ないでくださいよ。ハンバーグ、食べててください。食べないなら私食べちゃいますよ」
「や、幸せそうに食うなあって思って。ハンバーグ、食べたいなら言ってよ。ほら。」
そう言ってナイフで丁寧に切って私に差し出した。
私でも一口で食べれるぐらいの大きさに切ってくれたのか、小さい。
…ほら、って言われても、これ完璧、あーん状態なんですけど。
「大丈夫です。」
それだけ言ってまた私はパスタをもぐもぐと食べ始めた。
行き場のなくなったハンバーグを持っていた手はそのまま自分の方へ持ってって口に運んだ。
じとっとした上目遣いで人のことを見ている。
フォーク裏返して口に入れたままこっち見ないでよ。
捨てられた子犬みたいな目で見ないで!
そんな感じのがずっと続いたけど、そのまま放置してランチは終了。