『ギターの人』と聞いて合点した。

ケン兄と翔太サンの共通点。
そう言えばケン兄が友達を連れてくるのははじめてだ。

「元は不純な動機で始めたんだよね。ギター弾けたらモテるだろうっていう。」

「あー」なんてわかりやすい。

「コラ、そこ納得しない。」と翔太サンは笑う。

「ユカちゃん、M高だよね。ガッコー楽しい?」

「…まあ、それなりに。」

突然の質問にちょっと驚きつつ、適当な返事をする。

「オレね、H高入って『失敗したー』って思った。
みんな超ジミだし、高校入学してすぐ大学どこ受けるっつー話してるし。
何かねえ、おまえら楽しい?って聞きたくなる。
だからM高のやつらがちょっと羨ましい。かわいいコ多いし。」

ケン兄も通っているH高は、この辺の学区内ではトップの進学校。
校風自体が古めかしく、未だに髪を結ぶゴムは黒か茶という校則もあるらしい。お堅いことでも有名だ。
一方私の通っているM高は、この辺のナンバー2。
自由主義と言えば聞こえがいいけれど、『出るときは頭のレベルが落ちている』ということである意味有名。
今どきのかわいいコもたくさんいる。

「はあ」

確かに、翔太サンならM高の方が似合うだろう。
見た目がまんま『M高の人』。

「でも、隣の芝生は青く見えるっていうし。」

素っ気なく私は言う。
私が制服着たらH高の人だ。
翔太サンの言うところの「超ジミ」なM高の人らしくない自覚がある。
あまり行事は得意ではないし、オシャレも恋愛もとんと疎い。

翔太サンは目を丸くして、次にぷっと吹いた。

「レーセーだねえ、ユカちゃん」

私は「はあ」と心のない返事をした。