―――これは、夢だ。

ずぶっ

ひどくやわらかい感触。
まるでない、手応え。

ずぶっ

ナイフがもう一度刺さる。
刃が隠れるくらい、深く。

ずぶっ

男ははっと我に返り、ナイフを抜く。
手を見ると、ナイフも、ナイフを持つ手も真っ赤だ。
あかい、血のいろ。

男は悲鳴を上げる。
目の前の少年の腹部も真っ赤だった。

『翔太?』

奥から女の声がした。
途端、男はその場から逃げ出した。

少年は男が逃げ出した、開けっ放しのドアの前で、崩れる。
冷たい床に横たわり、徐々に床に赤い染みが広がっていく。
少年は、うつろな目をさまよわせ、何かを呟き、

目を、閉じる。

―――そこで私は、いつも目が覚める。