(ただ寂しくて、

似たもの同士で、

だから寄り添っているだけでしょう?)

翔太サンの華奢な背中を見る。
聞きたいのに聞けない。
足音も車の騒音でかき消される。
うるさいのに、とても静か。

(本当はもう、気付いている)

そんな思いが私を支配する。
本当はもう、ずっと前に気付いていた。

「翔太サン、ここでいいよ」

横断歩道の赤信号の前で立ち止まる。

「そう?…あのさ、そこの歩道橋のぼろう。あそこ、よくない?」

「へ?」

何が、いいんだろう。

「いいですけど」

別に、悪いこともない。
そう思って返事をすると、翔太サンは無邪気に「じゃ、決定ー」といって私をぐいぐい引っ張って歩道橋に昇った。
歩道橋のてっぺんの真ん中、丁度下を見下ろすと車道の真ん中までくると、「ほら」と翔太サンが言って立ち止まった。

「ドラマっぽくない?この景色」

車のヘッドライトは、歩道で隣で見ていた時とはまったく異なって見えた。
高見から車を見下ろすと、まるで別世界だ。
地上を行き来する車のライトはいくつもの線になって流れていく。

「そうですね」

ドラマっぽい、と言う翔太サンにちょっとあきれつつも、らしいなあと思う。
でも、確かに、テレビドラマに出てきそうな、綺麗な光景だった。
絶景、だ。

私たちはその景色にしばらくみとれていた。

「ねえ」

沈黙を破ったのは翔太サンだった。