レタス、きゅうり、トマト、ブロッコリーを洗って水を切る。
レタスはそのまま手でちぎって、きゅうり、トマト、ブロッコリーは一口大に切る。
ブロッコリーは茹でてザルにあげ、熱をさます。
あとはコーンの水煮缶を空けて水気を切り、ハムを切って他の野菜と合わせ、ドレッシングを和えるだけ。

翔太サンはダイニングテーブルとお揃いの椅子に座り、大人しく私の料理姿を見ていた。
あまり見られても緊張するのだけれども。

「はい、できあがり。」

「すげー、ユカちゃん、手際いいねー」

本当に感心しているらしい。大したことをしているつもりもないけれど、妙に照れる。

「家で家事の手伝いしているとか?」

「ううん。今はしていないです。おかあさんが再婚する前は時々作っていたから覚えているだけです。」

『再婚』

ふと翔太サンを見ると目が合い、それとなく視線を外した。

「シチューもあったまったし、食べましょう。」

「お皿どこですか」というと翔太サンは二つ、深さのあるフチが黄色と青のお皿を出してくれた。

シチューをよそう私の隣りに立ち、不意に頭を撫でられる。
私は何も言わない。
翔太サンも何も言わない。

やさしいな。

何も言わなくても、私に今必要な、やさしい手のひらがある。
私は思わずほほえんでしまう。

シチューとごはんとサラダをリビングの、いつものテーブルに並べてふたりで「いただきます」と手を合わせた。

「おー、ババア、まともなもん作れるんじゃん。」

シチューを一口食べた翔太サンが言った。
本気で言う翔太サンがおかしくて笑い、
一生懸命キッチンで格闘していたエプロン姿のみどりさんを思い出す。
「シチューは、作るならホワイトソースから作らなきゃだめなのよ。」
そう言ったみどりさんは真剣だった。
ちょっとだけだけど、みどりさんが包丁でにんじんを切る姿。
丁寧ににんじんを切る、みどりさんの横顔はやわらかく笑っていた。

自分のことじゃないのになんだか嬉しかった。