冬の毎日は、とても平和だった。

秋原家も私が少し遅く帰るようになった以外に取り立てて変化はなかったし、
高級マンションに住むみどりさんに会えば、おいしい紅茶を淹れてくれたし、気まぐれに私の髪の毛で遊んだり、化粧してくれた。
(とはいえ、みどりさんは「10代は絶対ファンデーション塗らない方がいい!」と力説して、するのはアイメイクとマニキュアくらいだ)

街はイルミネーションがキラキラ光っていて、

「あれって電気料金いくらかかっているんだろうね」

と言うと翔太サンは

「ロマンがない」

と言った。
クリスマスの季節の街中は派手にデコレーションされて浮かれている。
相変わらず私は何とも思わずに街中を通り過ぎる。

けれど、

23日の祝日。
お祭りが好きらしい翔太サンの強い要望で、ケン兄と私と翔太サンで、コンビニの丸いケーキとケンタのチキンと色のついた子ども用のシャンメリーを持ち込んでささやかにクリスマスを祝った。

音楽室にクラッカーのはじける音が響く。

翔太サンは私とケン兄の分を一人ではしゃぐから、その様子に私とケン兄はやたら笑ってしまった。

クリスマスは特別な日だから、と言って翔太サンはケン兄をそそのかして、はじめて二人が一緒に曲を奏でるのを聴いた。
全部クリスマスの曲だけれど、だから妙に優しい曲ばかりで、
翔太サンもケン兄もやさしい顔をしていて、

私は生まれてはじめてクリスマスに感謝した。


こうやって奇跡みたいなクリスマスは終わった。