ぽかんと口を開けて見上げてしまう。

街中から少しだけ離れたところにある、建ち並ぶ高級マンション街に翔太サンの家はあった。
唖然としてしまう。
高級そうなマンション。
自動ドアをくぐり抜けて、翔太サンはポケットから鍵を出し、インターフォンらしきところにかざすと目の前のガラスのドアが開いた。
呆気にとられている間に家の前のまで案内されていた。
ふと廊下から外を見ると、さっきまでいた歓楽街が一望できた。
強烈なネオンはここからだと小さな星がキラキラ光っているみたいだ。

リビングに通されて電話の子機を渡され、翔太サンはいなくなった。

電話をかけ、ケン兄と短い会話をして電話を切ると、部屋の中はしんと静まりかえっていた。
リビングは大きくて薄い液晶テレビらしきものがぽつんと置かれていて、大きいソファとテーブルがあるだけだ。
奥に対面キッチン。
冷蔵庫や食器棚のケースから食器が見えている。

「めずらしい?この家」

戻ってきた翔太サンはTシャツ姿で、手にカップラーメン二つ持っていた。

「いや、めずらしいというか…」

なんだ、このドラマに出てきそうな家は。
ていうのが本音。

「お金持ちなんですね。翔太サンち」

「あー、まあ。金は持っているよ、オレじゃなくてババアが」

面喰らう。ババア。
翔太サンは対面キッチンにあるティファールでお湯を沸かしてカップラーメンに入れている。

「おばあちゃん?」

聞き返すと「いんや、母親」と答えが返ってくる。

蓋の上に割り箸がのっているカップラーメンはおしゃれなガラスのテーブルに置かれるた。
カップラーメンがこの部屋から妙に浮いている。
はい、そこらへんに座ってね、と言われ、フローリングに座ろうとすると怒られた。

「お客さんはソファ」

ちょっとむっとするけれど、翔太サンはおかまいなしだ。
私がソファに座ると当然のように隣に翔太サンが座った。

「よし、伸びるから食べよう」

いただきます、と翔太サンは隣でカップラーメンを食べ始める。
私も翔太サンにならっていただきます、と手を合わせてずるずるとカップラーメンを食べた。

カップラーメンを数分でほぼ食べてしまった翔太サンはおもむろに口を開いた。