最後にはじいた弦の音の余韻が部屋に残る。



歌い終えると翔太サンはいつもの顔に戻った。

「さて、どうでしたか?」

翔太サンはこっちを見ない。
しきりに照れている。
ふと気がゆるんで、顔が笑う。

「・・・うん。いい曲だと思う。」

「そう?」

自信なさそうな翔太サンに

「そう思います」

と少し力を入れて答える。

翔太サンはやっぱりまだ照れていて、笑うけれど私を見ない。

「・・・ユカちゃんって冷めてる印象だったんだけどさ」

唐突に翔太サンがぼそりと言った。

「そうでもナイね」

隣の翔太サンは思い切り首を傾けて私をのぞく。
悪戯な目をしてその人は笑った。

からかわれてる。
ちょっとムッとなる。

不意に、

男の人の手が頬に

触れそうになるところにあった。


何が、

その先にあるのか分かっていた。


分かっていたのに、


(アイスグレーだ)


よく近づくとわかる。
色素の薄い瞳。
その中に、映った自分の顔を見つける。



―――私はその手を払いのけなかった。