何言っているんだろ。

と、気づいたときには遅かった。
翔太サンが目を丸くして私を見ている。
突然、どうして自分でもこんなこと言ったのか分からない。
どんな顔をしていいのかも分からなくて、下を見る。

「びっくりした」

翔太サンの声がする。
そりゃそうだ。
顔を上げられない。

がさごそと音がする。

「そんな期待するようなものじゃないと思うんだけどねえ」

黒いケースからギターが出てきた。

柔らかい木目に張られた黒い模様。

顔を上げると、はにかんだ翔太サンの顔があった。

翔太サンは楽譜を置いていたテーブルを奥に追いやって、足の上にギターを抱えた。
軽く音を合わせて、ちらりとこちらを見る。

「あんまし見ないで。照れる」

翔太サンは目を閉じて、すっと息を吸った。




ギターの音が響く。