あれから僕と海斗もおとなしく仕事をし、気付けば空は茜色

『はぁー!終わったー!』

「ほんとギリギリだったよなー!」

「ずっと話し込んでいた二人が悪いんですよ」

「ったく、俺は帰る。じゃあな」

燎はそう言って生徒会室から出た

『僕も用事あるから帰るねー!ばいばーい!』

また明日、と、言えないのは...明日が保障されているわけではないから

いつ、死んだっておかしくない

だから、絶対また明日なんて、言わない、言えない

無意識のうちに"私"が哀しい顔をしていたのに、気付かなかった



家に帰った私はスーツ姿になり、ウィッグとカラコンを外した

鏡に紅い髪と金色の瞳が映った

『"私"は...』

僕は一人じゃないけど、私は一人

僕が光なら私は闇

三浦琥珀という人間は、全く違う人間を演じている

そんな自分に関する常識を再確認していると、スマホが鳴った

『はい、闇夢です』

次は闇夢(ヤミユメ)という人間...いや、人形にならないといけない

"1時間後に華の間にて兎会を始めます。今から車を回します"

『了解しました』

電話を切って数分後、家の前に車が止まったのが見えた

私は家を出て、車に乗った

「お疲れ様です闇夢さん、今日の兎会は少々長くなりそうです」

運転しながら説明する焚音(タクト)

『はい、それは想定内なので問題無いです』

「...今日も行くんですか...?」

毎度同じ質問をする焚音はまだ私の理解者とは言い難い

『当たり前でしょう?それが仕事なんですから』

「でも!これ以上貴女が傷つ『違います。何度言ったら分かるのですか?』

『これは私が背負うべき十字架。貴方も分かっているでしょう?』

少し殺気を出せば黙ることを知ってて実行する私は狡い奴だろう

「...はい...」

『...もう本部に着きましたよ。今日もよろしくお願いしますね、焚音』

私は車から降り、いつも通り本部に入っていく