すると、イモムシはキセルの煙を吐きながら、何本もの短い足を組んで、さらり、と答えた。
『“真実を歌う笛”?残念だが、そんなものはここにはないぞ。』
「「えっ!」」
さも当然、と言わんばかりの態度に目を見開く私たち。
と、その時。
イモムシのくわえるキセルと、ラジオが目に入った。
私は、脳裏にある可能性が浮かび、ぽつり、と呟く。
「…もしかして、小人さんたちは“笛”と“キセル”を見間違えたんじゃないかな…。歌だって、ラジオから流れるものを笛の音だと勘違いしてもおかしくないし…」
イモムシの周りには彼が吐いたキセルの煙が充満している。
ぼやけたせいで小人たちが錯覚してしまう可能性はなくもないのだ。