彼の提案に頷くと、シラユキくんは小人達に果物を預けて彼らに言った。
「ステキな情報をありがとう!じゃあ、君たちには僕の代わりにお見舞いを頼むから、オズのことをよろしくね。」
『うん!いってらっしゃい!』
『気をつけてシラユキ!』
手を振る小人達に笑いかけたシラユキくんは、私に向かって声をかける。
「じゃあ行こっか、エラちゃん。」
と、その時。
ぴくん、とチェシャの尻尾が震えた。
「待って。」
「「!」」
チェシャの声に、私とシラユキくんは、はっ!とした。
少年へ視線を移すと、チェシャはどこか真剣な表情で私を見つめている。
「…“不思議の森”なら、僕が案内してあげるよ。」
「え…?」
まばたきをする私に、チェシャはローズピンクの瞳を細めてぼそり、と呟いた。
「笛探しなら人数は多い方がいいでしょう?」
(…!確かに…)
チェシャは、私から視線を逸らして歩き出した。
わずかな違和感が胸にあったが、私は“真実を歌う笛”の情報に浮き足立ち、チェシャの心を知ろうとなんてしなかったのだ。