ぞくり!
背筋が震えた。
(何…?!)
ウサギさんではない何者かに背中を取られ、首に短剣を突き立てられている。
分かるのはそれだけだった。
…シュル…!
「!」
後ろから、手が、私の腰に回った。
体のラインをなぞるように動く指の感触だけが伝わるが、その姿をとらえることは出来ない。
「…ウサギじゃ、ない…。…“女”…?」
ぞくっ、と体が反応する。
“見えない誰か”が、私を探るように呟き、首元に突き立てられた短剣が、つ…、と肌に触れた。
冷たい刃の感触に、心臓が止まる。
そして、見えない手が腰から徐々に上がり、私の胸に触れかけた
その時だった。
…カラン!
突然。
短剣が床に落ちた。
(!)
呼吸が止まった瞬間。
耳元で、無意識に出たような声がぽつり、と聞こえた。
「…“エラ”…?」
(え…?)
私が目を見開いたその時。
ぱぁっ!と目の前に1人の少年が現れた。
紫紺の髪に、ローズピンクの綺麗な瞳。
フードの奥から、ぱっちりとした猫目が私をまっすぐ映していた。
(…“男の子”…?)