きょろり、と部屋を見回すと、小さな本棚に人間界でよく見かける小説が並んでいるのが見えた。

彼は本好きらしい。


(この世界にも人間界の本が普及してるのかな?)


私は、そっとソファを立って本棚に近づいた。

そして、背表紙を眺め、一冊を手に取ろうとした

その時だった。


…キィ…


ふいに、扉が開いた音がした。

私は、ぱっ、と振り返る。


「…?」


しかし、そこには誰もいない。


(風で自然に開いたのかな…?)


どきり、としたが、私は小さく息を吐いて本棚に視線を移した。


…ギシ…


「!」


小さく床が軋む音が響く。


(え…?)


私が、再び後ろを振り向こうとした

次の瞬間だった。


「…ウサギ…?」


「!!」


幼い少年のような声が耳に届いた。


シュンッ!!!


はっ!としたその時。

首に突き立てられたのは鋭い短剣。

一瞬で体が強張り、呼吸が止まった。

と、その瞬間。

威嚇するような敵意のこもった声が低く響く。


「…あんた、誰…?」