(!!)
私は、彼に引かれるがまま歩き出し、まばたきをして尋ねる。
「…ま、まさか、ウサギさんと一緒に住むの?!」
「当然でしょ?不正に入国した君を匿えるのは僕くらいだからね。」
彼の言う通り、私には他に行くあてなんてない。
しかも、彼以外に頼れる人もいないのだ。
ウサギさんは、私をちらり、と横目で見て、ふっ、とわずかに口角を上げて囁いた。
「…まさか、緊張してる?あははっ、大丈夫だよ。僕は紳士だからね。手を出したりなんてしないから。しかも、僕の家には“同居人”もいるしね。」
「!べ、別にそういうことを心配してる訳じゃ…。…って、“同居人”?」
きょとん、とすると、ウサギさんは笑って続ける。
「うん。今日は留守…というか、彼は自由人だからあまり家に帰ってこないんだ。」
(いいのかな、連絡なしに勝手に住んじゃって…)
その時、ウサギさんは私の心中を察したように穏やかに続けた。
「…大丈夫。きっと、“エラの姿の君”なら、彼は許してくれるから。」
(え…?)
魔法使いの姿なら大丈夫、ということなのだろうか?
いまいち彼の本心が読めない。
(…なんだか、嫌な予感がする…)
この先、彼に関わることで、もっと大きな事件が起こるような…
そんなモヤモヤとした感情に支配されながら、私は彼とともに森を進み続けたのだった。