予想以上に体力を使う彼との鬼ごっこは終わりをみせない。
そして、あがる息の中、商店街の人混みを抜けると、細い路地裏に男性が入っていくのが見えた。
(…!見失う…っ!)
私はありったけの力を振り絞り、路地裏へと駆け出す。
すると、そこはしぃんとした暗がりで、蔦の絡まったレンガの壁が続いていた。
コツ…コツ…コツ…
入り組んだ道の奥から彼のものらしき足音が響く。
曲がり角のせいで後ろ姿は見えないが、私は彼の足音だけを頼りに路地を進んだ。
突き当たりの角を曲がると、前方に次の角へ消えていく彼の背中が見える。
横顔が見えそうで見えない
声が届きそうで届かない、そんな距離。
(一体、どこまで続いているの?この路地は…っ!)
するとその時。
ピタリ、と彼の足音が消えた。
はっ!として走る速度を上げる。
最後の角を曲がった瞬間。
その先に見えたのは、蔦の絡まるレンガの壁。
「嘘…、行き止まり…?」