すると、オズはエメラルドの瞳の色を濃くして、どこか縋るように私に言った。


「あいつ、今ドコにいる?あの天然バカ、家を訪ねても留守ばかりで会えた試しがない。あんたは、ウサギとどういう関係なんだ…?!」


さっきまでとは別人のような彼に戸惑う私。

“契約を結んだ仲だ”なんて、口が裂けても言えない。

そういえば、オークション会場でウサギさんはずっとフードで顔を隠していた。

目の前の彼が気がつかないのも無理はない。


「貴方は、ウサギさんの知り合いなの…?」


「…っ…」


私の問いに、彼は言葉を詰まらせた。

聞いてはいけないことだったのだろうか。

すっ、と私から手を離す彼は、どこか取り乱して何かを考え込むようにまつげを伏せている。


「…じゃあ、あいつの“家族”については知らないか?」


「“家族”?」


彼は真剣な瞳でぼそり、と、続けた。


「…っと…、た、例えばー……」


彼が躊躇しながら何かを言いかけた

その時だった。


ボーン…!ボーン…!


「「!!」」


遠くの空から、低く響く鐘の音が聞こえた。

その音を聞いた瞬間。

はっ!と体が強張る。


(まさか、この音って……!)


嫌な予感がしたその時。

水面に映った空色の瞳がどんどん魔力を失い、その光が消えていくのが見えた。


(!やっぱり、“12時を告げる鐘の音”…!!)