何かを思い出しかけた

その時だった。


「…っ、笛は…!!」


(!)


青年が、ばっ!と私から離れて声をあげた。

私も、はっ!として辺りを見回す。


そこは、広い湖だった。

周りは木々に囲まれていて人の気配はない。

月明かりだけが湖畔を照らし、私たちの影を水面に映していた。


(…そうだ、1番大事なのは笛だ…!あの水流に巻き込まれて、見失った…!)


と、私と青年が動揺して呼吸をした

次の瞬間。


パァァァッ!!


突然、湖が光に包まれた。

びくっ!

青年が光を警戒し、庇うように私を抱き寄せる。


ズズ…ッ!


その時。

身を寄せ合う私たちの前に現れたのは、綺麗な長い髪の女性だった。


「「…!!」」


目を見開くと同時に、女性はにこりと微笑んだ。

そして、私たちに向かって穏やかに声をかける。


『私の泉に立ち入ったのは貴方達ね…?まぁ…!びしょびしょじゃない…、かわいそうに…!』


(“私の泉”…?)