ぱしっ!


水中で、誰かに腕を掴まれた。

そのまま体を抱えられ、身を任せる。


(…っ…!)


バシャン…!!


やがて水流が穏やかになり、私は水面へと顔を出した。


「っ、…は、ぁ…っ!」


私の肩を抱くのは青年の腕。

見上げた先の光景は、既視感があった。

青年は何も言わずに私を見つめている。


「…っ、はぁ、はぁ………」


彼の荒い呼吸。

紺碧の髪から綺麗な首筋へと滴る水。

私を見つめるエメラルドの瞳。

けほけほ…、と咳き込みながら、私は無意識に呟いた。


「…し、死ぬかと…おもったぁ………」


「…こっちのセリフだ、ばか………!」


怒っている口調ながら、どこか優しげが残る彼の声。


ぎゅう…!


彼がお互いが生きていることを確かめるように私を抱きしめた。


「……何やってんだよ、あんた……」


「ご…ごめんなさい…」


濡れた服越しに彼の感触が伝わる。

冷え切った体の奥に、命の温度を感じた。

と、その時。

私の頭の中で、記憶のカケラが小さく光る。


(…あれ…?なんだろう…この感じ、どこかで…)