無意識のうちに体が動いていた。

急いで図書館へと駆け込み、キョロキョロと辺りを見回す。

しかし、彼のいたはずの場所には、ソファに座って休憩している様子のおじいさんしかいない。


(嘘…?!さっきまでいたはずなのに…)


するとその時。

背後からカウンターのお姉さんの声が聞こえた。


「貸し出し期限は1週間後までですので、お忘れなく。」


ばっ!


反射的に振り向くと、先ほどの男性が本を片手に図書館を出て行く姿が見える。


(?!もう借りたの?!すれ違ったことにも気がつかなかった…!)


私は、彼を追って足早に図書館を出た。

必死に辺りを見回すと、商店街の人混みの中に鞄を肩にかけた例の彼が見える。


(逃すもんか…っ!)


私はスカートを翻し、白シャツの彼へと走り出した。


タッタッタッ…!


真昼の商店街は人が多い。

しかし、例の彼といえば、談笑するマダムや学生の合間を縫ってするすると歩いていた。


(何、あの人…!こっちは走ってるのに、歩いてる彼に追いつけない…っ!)