聞き覚えのある低く凛とした声が聞こえた。

その瞬間。

はっ!と目を開けると、ばさり!と視界に“茶色の外套”が映る。


ぐいっ…!


(…!)


確かな腕の感触が私の体を包んだ時。

私に絡みつく寸前の緑のツルが、パァン!と消え去った。


「なっ…?!!俺の魔法が、消えただと…?!」


男が動揺を隠せず呟いた瞬間。

すると、私を庇った彼が低く答えた。


「…俺には魔法が効かないからな。」


その時。

彼の声と記憶の中の声が一致した。


『───110万。』


顔を隠していた彼の外套のフードがばさり、と取れる。

深い夜の海のような紺碧の髪。

男を睨むエメラルドの瞳は、魔力で淡く輝いていた。


(この人…、私とさっきまで闇市で競り合っていた“13番”の人…?)


想像よりも若い彼の容姿に目を見開く。

恐らく、私と同い年か少し年上だ。

綺麗な横顔から、そのルックスが整っていることが一目見ただけで伝わってきた。

背中に回された彼の腕は、外見よりも逞しい。

その時。

私を庇う彼がぐいっ!と私を抱き上げた。


(っ?!)