「待てぇーっ!!」


タッタッタッ!!


外套をまとった犯人を視界にとらえ、必死で背中を追う。

地下を出て、夜のとばりに包まれた街に2人分の足音が響いた。


(スられるなんて、油断してた…!あの闇市は“ちょっとワルイヒト”の集まりだって言われてたのに…!)


どうやら、私の笛を奪った犯人は若い男のようだ。

走るスピードは私よりも速い。


(こうなったら…!!)


私は、近くに転がっていた空き瓶にターゲットを定める。

そして、ばっ!と腕をかざして空色の瞳を輝かせた。


パァァァッ!


次の瞬間。

空き瓶はみるみるうちに見慣れた“自転車”へと形を変えた。


(これなら追いつく…!!)


自転車に勢いよく乗り、ガッ!とハンドルを握ってペダルを漕ぐ。

ぐん!とスピードを上げた自転車は、男との距離を一気に縮めた。

こちらを振り返った男は、そんな私を見て急に焦ったのか、歯を食いしばって私を睨みつける。


(いける…!)