カンカンカン!!!
乾いた木槌の音が会場に響いた。
燕尾服の支配人がマイクを握る。
『ハンマープライスです!この“真実を歌う笛”は、見事、132番の方が今夜の最高金額で落札です!!』
ワァァァッ!!
会場中が熱気に包まれた。
沸き起こる歓声と拍手。
しかし、私の耳にはやけに遠くから響いているように聞こえた。
「…やっちゃったねえ、アリス?」
確信犯の笑みを浮かべるウサギさんに、私は意識が遠ざかっていくのを感じていた。
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「いやー!あんなに分厚い札束を持ったのは久しぶりだよ。数年前にやった人生ゲーム以来だねえ。」
満足げに地下の廊下を歩くウサギさん。
…と、生気をなくした顔で歩く私。
(…ついにやってしまった…。いい子の道を踏み外したどころじゃない。外道中のクズ人間に成り下がってしまった…!)
「そんな顔してどうしたの、アリス?君のお目当てのお宝が手に入ったのに。」
「…ウサギさんはどうしてそんなにお気楽でいられるの…」
私は呑気に笑う彼を見て、罪悪感に潰されそうになっている自分がバカバカしくなってきた。
こうなったら、さっさと笛に人間界への帰り道を聞いて、罪が発覚する前に向こうに逃げてしまうのが得策かもしれない。
“ダイヤ偽装”の主犯は、私の隣にいるこの黒ウサギなのだから。