ざわざわざわっ!!


先ほどよりも大きなざわめきが会場を包んだ。


(ひ、ひゃく………っ?!!)


私は、ついウサギさんのコートをぐいっ!と引っ張った。

「おっと、」とよろめく彼に私はこそこそと早口で声をかける。


「ウサギさん、いくらなんでもあんなリコーダーに100万って…!やりすぎだよ!」


「やっぱりアリスはまだ、あの笛のことを安物のリコーダーだと思ってたんだね?…元はと言えば、君が欲しいって言った品物じゃないか。」


(そ、それはそうだけど…!)


私は、目を細めるウサギさんに辺りを気にしながらぼそり、と尋ねた。


「あの、ずっと気になってたんだけど…。ウサギさん、お金持ってるの…?」


すると、彼は一瞬“きょとん”として、私を見つめた。

その直後、ふわりと笑った彼は「もちろんだよ〜」とコートの内ポケットから1枚の紙を取り出す。

その紙を凝視した私は、眉を寄せて彼に尋ねた。


「…ウサギさん。…これは?何かの小切手?」


「んーん。“1000ダイヤ札”。」


「………。」


沈黙が2人を包んだ。

嫌な予感がこみ上げる中、私は尋ねる。


「あの…100万ダイヤは?持ってきてるんだよね?キャッシュカードとか?」


すると、ウサギさんは「あはは、やだなあ。」と笑ってさらり、と言った。


「そんな大金、持ってるわけないじゃないか。」


「っ?!?!?!!!」