「オズーっ!」
桜の蕾がほころぶ新学期。
駅前の図書館に、“彼”はいた。
「…また“オズ”かよ。」
「えへへ、呼び慣れちゃったから。」
目を細める彼に、私は続ける。
「ウチの制服、似合ってるね。編入試験合格おめでとう…!」
「あぁ。ウサギに勉強をみてもらったからな。」
私は、くすりと笑って尋ねた。
「結局ウサギさんの家に住むことにしたんだ?」
すると、急に不機嫌になった彼は眉を寄せて唸る。
「…あぁ。あの黒ウサギ、俺が遠い親戚のもとで育ったことをいいことに、人間界から失踪した時に話をつけて、俺の親権をもらっておいたらしいんだ。」
「ふふ…!さすがだね。…ってことは、オズはウサギさんの“息子”ってこと?」
「やめろ。…吐き気がしてきた…」
くすくす笑う私を軽く睨むオズ。
桜吹雪が舞い踊る中、彼は小さく息を吐いて呟いた。
「…この図書館で、俺たちは出会ったんだよな。」
彼の言葉に、私は顔を上げた。
そこには、私がウサギさんを初めて見た市立図書館が見える。
ここが、全ての始まりの地だ。
「…オズと一緒に帰ってこれてよかった。」
つい、そう呟くと、彼は少しの沈黙の後、口を開く。
「あぁ。…向こうでのことは今でもたまに思い出す。」