「「!!」」


言葉が出なかった。

写真に写っていた男性が、目の前に現れる。

魔力を一切絶ったウサギさんこそが、この部屋の住人だったのだ。


「…ウサギさんが、エラさんの恋人だったってこと…?」


私の問いに、彼は無言で頷いた。

ウサギさんは、ぽつり、と語り出す。


「人間界でエラと出会い、僕たちは惹かれあって恋に落ちた。…だけど、それが原因でエラはジョーカーに捕まってしまった。」


目を細めるオズは、黙って話を聞いている。


「エラが魔法使いだと知っていた僕は、彼女に会うために不思議の国に乗り込んだ。」


どくん…!


ざわざわと心が揺れる。


「エラが捕らえられている城の牢獄に入るには、魔力が必要だった。…この先は、オズ君と同じさ。」


「!」


その問いに、オズは躊躇しながら呟く。


「…まさか、ウサギもトレメインに契約を結ばされた“駒”だったのか…?」


彼は、小さく苦笑した。

そして、悲しげに答える。


「…そう。トレメインがエラのことを密告した張本人だと知らなかった僕は、彼女の誘いに乗り、自らを差し出して契約を結んだ。…“トレメインが死ぬまで、彼女に偽物の愛を与える契約”をね。」