私は思わず目を丸くして、ぱっ!と再び写真に見入る。
ウサギさんは静かに続けた。
「その女性が、魔法で人間のフリをしていたエラだ。…まぁ、髪と瞳の色を変えたくらいだけどね。」
写真に写る美女が、私の成り代わっていた彼女だったのか。
(この人が、“エラ”さん…)
じっ、と黙って見つめていると、眉を寄せたオズが小さく尋ねた。
「なぜこの家の鍵を持ってるんだ?…あんた、エラさんの家から勝手に盗ってきたんじゃないだろうな?」
「ふふ、まさか。」
くすりと笑った彼は、ポゥッ…!と桜色の瞳を輝かせた。
そして、低く呟く。
「聞くより、“見た”方が早いと思うよ。」
(え…?)
私とオズがまばたきをした瞬間。
ウサギさんの瞳がわずかに“空色”の光を灯した。
ブワッ!
部屋に立ち込めるウサギさんの魔力。
彼に宿るのは、“シンデレラの魔力”だった。
はっ!としたその時、ウサギさんの体を無数のトランプが包む。
バサバサバサッ!!
一斉に、トランプが舞い上がった。
その先に見えたのは、“アッシュブラウンの髪”。
(…!)
息を呑んだ瞬間。
見知らぬ姿に変わった“彼”が、静かに口を開いた。
「…“橘 湊人(たちばな みなと)”。それが、この世界に生きていた頃の僕の名前さ。」