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「本当にここで合ってるのか…?」
私の隣で、オズは建物を見上げてそう呟いた。
扉の闇の先は、私が不思議の国に迷い込んだ、あのレンガの路地に繋がっていた。
私たちは、最後の秘密を暴くため、ウサギさんのメモに記された住所に向かう。
(まさか、シオリビトの人間界での拠点とかなのかな…?)
そんな想像をしながらいざ訪ねてみると、そこは綺麗なマンションだった。
オシャレでモダンな外観に、ごくり、と喉が鳴る。
ウィーン…!
メモに書かれた文字列を打ち込むと、入口の自動ドアが開いた。
そして私たちは上の階へと上がるエレベーターに乗り、鍵に彫られた“406”の番号の部屋の前で足を止めた。
表札に記されているのは、“橘(たちばな)”の文字。
恐る恐る鍵を差し込むと、ガチャリ…!と鍵の開く音が響く。
(…!開いた…!)
オズが、藍色の瞳を緊張気味に細めた。
「…入るぞ。」
「う、うん…。」
キィ…!
ゆっくり扉を開けると、そこは掃除が行き届いた綺麗な玄関だった。
“男物の靴”が並んでいる。
(…ここは、誰の家なんだろう…?)