「私も、チェシャに会えるの待ってるからね…!」
その言葉に、こくこく、と何度も頷いたチェシャ。
離れがたいながらも、しぶしぶ私から離れた彼は、まだ甘え足りないらしく、ウサギさんに抱きついた。
そんな光景を微笑んで見つめていると、ウサギさんが、すっ、とポケットに手を入れる。
「アリス。…これを。」
「?」
差し出されたのは“1枚の紙”と、“鍵”だった。
オズとともに目を見開くと、ウサギさんは目を細めて囁く。
「君たちを利用したお詫びに、“僕の秘密”を教えよう。ここに書いてある住所に行ってみるといい。」
(え…?)
にこり、と微笑んだウサギさんは、トン!と私とオズの背を押した。
ギィ…!
開かれる“人間界への扉”。
不思議の国との境界線が曖昧になる間際
ウサギさんの声が響いた。
「“全てを解く真実”が、そこにある。」
(…!)
彼のいつもの笑みが視界に映った瞬間。
ぐわん!と体が扉に吸い込まれた。
───そして、私はオズとともに、扉の先に広がる真っ暗な闇の中へと落ちていったのだ。