すると、微笑みを崩さない彼は、さらりと答える。
「もちろん、“初めから”さ。」
「…!!」
(この黒ウサギ…!!)
私の視線に苦笑した彼は、「あはは、ごめんごめん。」と軽やかに笑い飛ばす。
そして、ウサギさんは、言いたいことが山ほどある私をさらり、とかわし、オズに声をかけた。
「オズ君。君はアリスとともにここを通って、“人間界へ亡命”するんだ。」
「!」
人間の姿のオズが、ぴくり、と肩を震わせた。
全てを理解したオズは、落ち着いた表情で頷いた。
その選択肢しか、彼が生き延びる術はないのだ。
ウサギさんは、ふっ、と、笑って続ける。
「大丈夫。この国での君の記録は僕が全て消しておくよ。ジョーカーにも“知り合い”がいるんでね。」
(!)
オズが目を細めて呟く。
「“知り合い”?」
「ふふ。数少ない友人だよ。…それに、ここで国家公務員の権力を使わずしてどうするんだ、って話だしね。」
堂々とした職権乱用発言に一同が顔をしかめた。
にこりとしたウサギさんは 、そのまま続ける。
「…さぁ、最後に挨拶するくらいの時間はあるよ。」
(…!)
その時、それを聞いたシラユキくんが小さく呟いた。
「オズ…」
カグヤも、オズを見つめている。
(…!そっか。オズが人間界に帰るということは、2人とは2度と会えなくなるんだ。)
オズが眉を下げて躊躇するように口を開こうとした
その時だった。