がたん!と立ち上がる私。
「あ、アリス…!目立つから座って…!」
ウサギさんがなだめるが、そんなことに構う余裕はない。
私の意識は壇上に現れたお宝に奪われていた。
見た目は小さな縦笛。
しかし、真っ白な笛に細やかな装飾が施されたその笛は、宝石で出来ているように輝いて見えた。
「ウサギさん!あのリコーダーだよ!!何としてでも買わないと!!!」
「アリス、リコーダーじゃないからね。」
すとん、と席に座った私は、ドキドキと高鳴る心臓を抑えながら深呼吸をする。
その時。
燕尾服の支配人がマイクを片手に声をあげた。
『さぁ!こちらは、かの有名な“真実を歌う笛”です!どんな問いにも答えてくれるまぼろしの一品。38万ダイヤからスタートです!』
(!始まった…!)
「40万!」
発起人の声とともに、次々に札が上がっていく。
「45万!」
「55万!」
すでに、先ほどのオルゴールの値段を軽く超えている。
(やばい…。やっぱり、みんなあの笛を狙っているんだ…!ここにいる人、実はみんな帰り道を探す人間なんじゃないの…?)