オズの言うことは、もっともだった。

彼を信じたくても、裏切られたという真実が重い鎖のように足に絡みつき、ウサギさんへと駆け寄りたい私を引き止める。

しかし、その時、頭の奥に少年の声が響いた。


“…ウサギのことを信じてあげて。”


(!)


闇夜で見た蜂蜜色の瞳が蘇る。


“あの人は、悪役になる道を選ばなくちゃいけなかっただけだから。”


どくん!


リューイの顔が浮かぶと同時に、ガーデンでの記憶が頭をよぎった。


“アリス、リューイと一緒にここに隠れるんだ。今、“あの人”に君達の姿を見られるわけにはいかない。”


そう言ったウサギさんは、確かに私を守ってくれた。

彼が、本当にトレメインの味方なら、あの時に私を引き渡していたはずだ。

月明かりに照らされたウサギさんの声が響く。


“秘密は、人に言えないから秘密なのさ”


…すっ。


私は、オズの腕をゆっくりと掴んで下ろした。

ウサギさんを見つめる私に、オズは目を見開く。


「…私は、ウサギさんを信じる。」


チェシャが、はっ!と肩を震わせた。


「ウサギさんがいたから、私は今までこの世界にいられた。…私を守っていてくれたウサギさんも、本当の彼だと思うから。」