顔をしかめるオズに、カグヤはくすくすと笑っている。

その時、チェシャがローズピンクの瞳を細めて声を上げた。


「…話したいことは山ほどあるけど、今はこの状況をどうにかしないとだよ。このままじゃオズは、ジョーカーに追われるどころか、あの女に捕まるかもしれない。」


ぞくり…!


事の重大さが、ずしり、と体にのしかかる。

オズを追う“魔女”の姿を思い浮かべただけで、身震いがした。

私は、ぽつり、と呟く。


「…一体、どうすれば…」


その場にいた全員が険しい表情をした、

次の瞬間だった。


「そんなの簡単さ。トレメインとの契約を破棄すればいい。」


(!)


廃墟の古城に、“彼”の声が響いた。

ばっ!と声のする方を見ると、そこに現れたのは白いシャツの男。

白い髪が風になびく。


「ウサギさん…!!」


ぱっ!と顔を明るくする私。

私が、思わず彼に駆け寄ろうとすると、すっ、とオズの腕がそれを制した。


(…!)


オズは、険しい顔でウサギさんを睨んでいる。


「オズ…?」


戸惑いながら彼を見上げると、オズはウサギさんを警戒したまま私に答える。


「アリス。こいつを信用するな。この黒ウサギは、“裏切り者”だ。」


(え…?)