トレメインは、愛する人に先立たれ、愛されることにひどく固執するあまり歪んでしまった。

だが、不幸が作り出したものだとしても、彼女の行動は許されるべきものではない。


「この国に来てから、ずっと、オズは1人で…?」


「いや。ウサギの友人だという男に育てられた。」


(“ウサギさんの友達”…?そっか。たしかに、幼い頃にこの国に来たオズが1人で生活できたわけがないもんね。)


「…なぁ。」


オズが、小さく私を呼んだ。


「…もう1度聞く。…あんたが、“アリス”なんだろ…?」


(!)


どくん、どくん、と体が脈打った。

きっと、この鼓動はオズに筒抜けだろう。

もう、嘘をつく必要はない。

私は、すぅ…、と息を吸い込み、ぽつり、と答えた。


「…うん。」


「!」


「…ご、ごめんね。…私、ずっとオズを騙してて…」


と、私が言いかけた

その時だった。


ぎゅっ!


(!)


オズが、強く私を抱きしめた。

背中に感じる彼の体温に、呼吸が止まる。

しぃん、と静まり返る遺跡。

聞こえるのは、2人の鼓動。


「…やっと、見つけた…」


「…!」


ぽつり、と聞こえた声に、どくん!と胸が鳴った。

無意識に溢れたような言葉は、微かに震えている。


「…俺は、自分があんたに惹かれてると気付いた時から、“あんたがアリスであってほしい”って、ずっと思ってた。」


「!」